【読了時間: 10分】
本日、フレームワークス物流オープンデータ活用コンテストの受賞式が行われました。物流データを扱ったコンテストからどんな作品が出てくるのか、ワクワクしながら参加しましたが、受賞者が中小企業診断士の方やエンジニア、大学院生など幅広く、新鮮でした。
以下、参加レポートを共有します。
(コンテストの概要や提供されたデータについては、過去に本ブログで紹介した記事を参照)
最優勝賞
「先輩!秘密の休憩場所を教えてください!」
運転日報データを利用して、場所や時間に応じた休憩場所を教えてくれるWebアプリ。GoogleStreetViewなどとマッシュアップして、周辺の情報を表示することも可能。「オープンデータが企業診断に有効と感じた。GoogleのWeb APIを活用し、開発だけでなく、サービスを考えることに時間をあてることができた。」
優秀賞
「Motion Boardを活用したゾーン型配送コントロールを実現するサービス提案」
ドライバーの高齢化や新規就労者の減少に注目。長時間労働・長時間拘束を課題とした。物流管制センター向けに2つのアイディアを提案。
- ゾーン型配送という、配送センターからたとえば3時間で到達可能な範囲をゾーンとし、ゾーンとゾーンが重なるところをクロスポイントとし、ドライバーの橋渡しをできるように。
- ドライバーカルテをつくり、ドライバーの労働時間を管理できるように。
優秀賞
「Motion Boardを活用した倉庫内のレイバーマネジメントサービスLogiZapの提案」
Googleで「ピッキング 不公平」と検索すると、該当する口コミが出てくるように、やっていない人が得をする構造になっていないかと課題感を持った。倉庫スタッフの心拍数や歩数などの活動状況をリアルタイムで可視化し、スマホで閲覧できるように。スタッフの心拍数が一定数を越えると、バイタルアラートを鳴らすことができる。
優秀賞
「運転日報・トラック運行チャート情報」の2次元/3次元可視化アニメーション」
世界中の移動体データのビジュアライゼーションをレビューした。NYC Taxiを開発したChris Whong氏のブログ記事を参考に、実装を試みた。
優秀賞
「視覚障害者による倉庫内ピッキング作業の協調のための進化的ロジスティクス最適化」
視覚障害者の目となって、マルチエージョントシステムにより安全を確保した移動経路を作成する。GA(遺伝的アルゴリズム)により最適化し、スタッフがぶつからないようにシステムを構築した。
審査員特別賞
「ドライバーの運転技術を可視化するWebアプリ CARIBOU」
ドライバーのランキング機能と危険な場所のマッピング機能がある。ヒヤリハット、急ブレーキ、急ハンドルのデータを活用。ある程度、偏りが確認できる。
審査員特別賞
「予約ベースの物流プラットフォーム事業の立ち上げについて」
荷待ちが発生する原因をCRT分析(「ザ・ゴール」の書籍参照)という方法で調べたところ、トラックが集中するためだと分かった。空港の飛行機の離発着のように、配送においてもトラックの予約システムをつくれば、解消できると考えた。現在、普及していない問題をさらにCRT分析で調べたところ、情報の分断構造が根本原因だと判断。トラック配送データを活用し、予測・計画ベースでクラウド予約システムを提案。
感想
想像していたよりも、物流業界の課題を正面から向かい、作り込まれているものが多く、レベルの高さを感じました。フレームワークスの秋葉社長の講評で最優秀賞を選ばれた観点として、「我々が全く考えてない視点だった」という言葉が印象的でした。依頼主である会社の要望は聞くが、休憩する場所のようにトラックドライバーの立場に立って考えることはなかったというのは、まさにオープンなかたちでデータを公開し、関係者以外からもアイディアを募る意義だと感じました。物流というと、オペレーションズリサーチに代表されるように業務最適化が注目されることが多いのですが、「誰にとっての最適化なのか?」というのは、人口減少が進み、働き手が少なくなっているような現代にこそ大事な切り口かもしれません。
個人的には「視覚障害者による倉庫内ピッキング作業の協調のための進化的ロジスティクス最適化」がとても印象的でした。というのは、自動車業界でいうところの自動運転に近いものを感じたためです。倉庫という限定的な空間であれば、技術的ハードルや制約は自動車業界ほどではなく、また、完全に自動化も考えられるなか、敢えて視覚障害者に着目し、新しい雇用を生み出そうという視点がとても新鮮でした。
来年も引き続き実施を計画されているということで、今からとても楽しみです。来年は一参加者として出てみたいと思いました。
参考
執筆: 仙石裕明