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本記事は学会発表・ジャーナルに投稿するまでの流れにおける最初のステップとして、LABで実施しているアブストラクトのつくりかたと考え方を紹介します。

ここでのアブストラクト(以下、アブスト)とは、進捗共有をできる中間資料 として意味を込めて記載しています。

アブストを作成してみよう

Twitterの140字でつぶやく程度に研究計画もでき、手も動かしてある程度の結果にまとめてみましょう。ここで大事な点は、シンプルでいながら重要な情報は削ぎ落とさないことです。はじめての人が1〜2分話を聞いても、理解してもらえるまで何度も何度も作り直していきます。とても難しく、忍耐のいる作業ですが、一度文字に落としてみるとそのあとの進め方が大きく変わってくることでしょう。

アブストには何を書くべきか?

大事な点としては下記のような項目が考えられます。

  • どのような未知および研究課題があるか?
  • これまでの既往研究でどこまで明らかになっているのか?
  • どのようなアプローチで未知および研究課題を対処しようとしているのか?(新規性)
  • どういうことが導かれたか(導けそうか)
  • 残課題として何をやるべきか?

実際に研究を進めるにつれて上記の点を具体化しつつ、アブストラクトそのものをアップデートしていきます。最終的な結果と考察がまとまるまでこの工程を繰り返し、これをもとに論文として肉付けを行なっていくことで、わかりやすい論展開となる論文ができあがるでしょう。

既に研究を進めている方も、これからの方もぜひ試してみてください。

補足

人に伝えるステップは、論文を書くときで良いと思う方もいるかもしれません。この段階で実施した方が良い理由は大きく次の2点あると考えています。

  • 常に研究進捗上の課題を把握する

研究を進める過程では往々にして、現在の論から外れたことや泥沼化することは少なくありません。エネルギーの掛け方という意味において、大幅な逸脱を防ぐべく上記項目を認識できていると、撤退際もみえてくるでしょう。何より論文として実施したいことそのものは、結果がなくとも書き出すことができます。いずれにしろ避けては通れないステップであるため、早いうちから書き出しておいて損はありません。

  • 的確なアドバイスをもらいやすくするため

指導者に途中経過を報告してアドバイスをもらったり、共同研究者間で議論していくことが多々あります。このとき、指導者や共同研究者は著しく忙しいなか僅かな時間を当ててもらっていると考えた方が良いです。また、毎回の進捗報告であっても事細かく覚えてもいないだろうが、研究は概してとても細かい話になりやすいです。

ほしいアドバイスをいただくためにもアブストラクトのようなかたちにまとめて、現状をコンパクトに伝え、論点を明確にする必要があります。

執筆: 仙石裕明